left
center
right






ソフトバンク・ファイナンス株式会社
ネットバンキング部
マネジャー

大前和徳氏

(プロフィール)

1993 年、北海道大学経済学部を卒業し、旧北海道拓殖銀行に入行。97年、ボストンでの語学研修から帰国後、同行の破綻に遭遇。中央信託銀行への営業譲渡を見届け、99年に退職。同年10月、英国ランカスター大学マネジメントスクールに留学し、MBAを取得。2001年、ソフトバンク・ファイナンスに入社。現在に至る。36歳。

自分を思い切りリセットするために選んだMBA留学

 日本型の雇用形態が大きく変わりつつあった90年代。それでも、よもや大手都市銀行が破綻の憂き目に直面するとは、どれほどの人が予想したであろうか。護送船団方式という旧大蔵省の強力な指導のもとに、金融機関の安定秩序は永遠とうたわれていた。そこで働く、行員自身こそ信じて疑わなかったのである。

 「当たり前だと思っていたことが当たり前でなくなってしまったのです。価値観が大きく崩れただけでなく、これからの自分の人生をどうするべきかとまざまざと考えさせられました」 現在、ソフトバンク・ファイナンスに勤務する大前和徳氏はこう語る。

 地元北海道大学を卒業後、旧北海道拓殖銀行に入行。法人金融部門に在籍し、札幌に拠点を持つ上場企業への融資を担当した。「国際的なビジネスに携わりたい」と行内選抜に応募。ボストンでの語学研修メンバーの1人に選ばれる。帰国後、東京営業部に転勤。再スタートに燃えた直後の出来事であった。

 破綻後、同僚の退職が続出。「途中で投げ出すのは疑問だ。現実を見極めた上で、自分の気持ちを整理したい。会社への忠誠心、愛着の証しとして営業譲渡まで見届けたい」と考えた。

 並行してキャリアカウンセリングを何度か受けた。「これまでの実務で培ってきた金融財務の知識では世間に通用しないことを思い知らされました。都銀という看板を背負っていたに過ぎない、今のままではダメだと。自分を思い切りリセットしなければ。徹底的に違う環境で、凝り固まった過去をリフレッシュしたい。自分の履歴書に新たな1行を書き加えるためにも。信託銀行に移っても、その先の自分が描けない」

 そんな思いが募り、MBA留学を決意。1999年、英国ランカスター大学マネジメントスクールに入学し、経営全般を学んだ。

 大学で経営学を専攻したこともあって、基本的な経営理論や知識は勉強しているつもりだった。だが、『シンキング・オブ・シンキング(考えることを考える)』というランカスター独自の指導方針は、新鮮さに満ちていた。「ビジネスは論理で計り切れるものではない。企業や組織は混沌としたカオスとして理解するべきである。より多くの人の意見に耳を傾け、機微を理解し、意識的に考えながらマネジメントすることが大切だと教えられました」。そう当時を振り返る。

 「同級生からはキャリア観を揺り動かされました。ジョブセキュリティーを得るには、自分の人生を自分で決められる存在にならなければ。誰もが認めるプロとしてのパフォーマンスを発揮することが重要だと。今でも、常に自分に言い聞かせています」

 「転職活動は、帰国してから」と自分に言い聞かせ、留学中は欧州に徹底してのめりこんでいた大前氏。だが、「インターネットによって、ヨーロッパが1つになる」という劇的な変革に直面するうち、「インターネットの可能性をもっと見極めたい」と意識し始める。自分がどの分野で活躍したいのかが、ようやくイメージできるようになってきた。

 帰国して3カ月後、「金融業界の革命児」と謳われるソフトバンク・ファイナンスに転職。ネットバンキングの仕事に就くことができた。インターネットバンキングのコンサルティング、事業企画を手掛ける仕事だ。

 「社長面接で、インターネットのパワーで金融業界を変える野望はあるかと聞かれ、迷わずコミットメントしました。新撰組ではありませんが、金融イノベーターとして何か革命を起こしていきたいのです」。最近では、ネットバンキング業務だけでなく、IR、グループ会社の監査業務にも取り組むなど多忙な日々が続いている。

 「MBAで学んだ知識は賞味期限があっても、考え方、思考やアプローチの仕方は生かし続けることができます。今の仕事では、アライアンス(提携)を組むことが多いだけに、メンタリティーが違う相手とどう折衝、調整していくかが重要です。いかに方向感を取っていくかを考える際に、役立っています」

 人生を長期的に考えているという大前氏。今は、与えられた環境で最大の成果を生み出すことを目指している。「もはや、ラーニングステージではなく、アクションステージに立たなくてはいけません。東京でゼロからリレーションシップを構築し人脈を広げ、海外企業とのビジネス連携も積極的に進めていきたい」

 その時には、ビジネススクール時代に築いたグローバルなネットワークが大きな財産になることは言うまでもない。

今回のキーワード「リセット」

 勤務先の破綻によって、突然訪れた人生の危機。自分をリセットするという膨大なパワーを与えてくれたのは、故郷である北海道を彷彿させる美しい都市、ランカスターであった。遠い異国で自分の新たな生き方を模索すると同時に故郷の再生に思いを寄せたことだろう。大前氏との会話からは、生まれ育った北海道に対する愛着が伝わってくる。

(取材・文/袖山俊夫)
Copyright 2004 Nikkei Human Resources, Inc., all rights reserved.
Global Taskforce K.K., all rights reserved.