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LEADERS INTERVIEW
for Career Management

目標達成にどん欲になれ!


株式会社
テイクアンドギヴ・ニーズ

代表取締役社長

野尻 佳孝氏


1972年東京都生まれ。95年明治大学政治経済学部卒業。同年住友海上(現三井住友海上)入社。98年テイクアンドギヴ・ニーズ設立、代表取締役社長就任。2001年ナスダック・ジャパン(現ヘラクレス)上場、04年東証2部上場を果たす。著書に『史上最短で、東証二部に上場する方法。』がある。

会社員時代に業界研究

  当社を設立するまでの約3年間、僕は保険会社に勤め、ベンチャー企業を支援する部署にいました。そもそもその部署に志願したのも、学生時代から独立すると決めていて、そのノウハウを一番学べる部署だと考えたから。取引先を開拓しながら業種研究を行い、自分に向いている事業をリサーチ。多くの経営者に会って、経営者になったときを想定したシミュレーションをしていました。ゴルフを覚えたのも経営者に近づくため。正直な話、僕にだって人の好き嫌いはあるし、自分から人脈を広げるタイプじゃありません。それでも独立するには1人では不安です。支援者を必要としていました。

  はっきり言って、サラリーマン生活はつまらなかった(笑)。仕事を通じて学んだ財務諸表の見方や、プレゼンテーションのやり方などは独立してからも役に立ちましたが、組織の作り方といった経営者としての知識や経験は、かなり出世しないと学べるものではありません。だから「ここから早く抜け出そう」と、自分にプレッシャーをかけていたものです。

  社員3人、家賃2万円の事務所からスタートして、現在従業員680人を超えた当社にとって、課題となっているのが次のリーダーとなる人材の育成です。社員100人までであれば、自分1人で細かく指示を出せましたが、この規模になるとそうはいきません。僕は社内のリーダー候補を集めた「野尻塾」を開催し、自ら講師となって彼らにレクチャーしています。講義の中身は、僕の経験に基づいた部下の褒め方・しかり方といった実践的な指導など。やり方は極めてアナログですが、効果は早くも表れています。「野尻塾」に集まったのは、ウェディングプランナーなど現場の経験者たちですから、最初はどうしても自分の得意分野に目が向きがちです。しかし、店舗責任者など“ミニCEO”として組織を仕切っていくためには、お客様以外にも取引先・スタッフ・施設など「360度」に目を配る“視野の広さ”が必要になります。特定のケースを題材としたディスカッションなどを通じて、その視野を広げてくれたのではないでしょうか。

CEOの3つの仕事

  これからCEOを目指す人が知っておくべきCEOの重要な仕事とは、次の3つではないかと考えています。

  1つは「会社を社員に愛される環境にすること」。僕は会社員時代から、多くの企業を訪問しながら、ずっとこのことを考えてきました。当社では3カ月に1度、全国の社員を集めた社員総会を開催し、レスリング場をステージにするなど、毎回趣向を凝らしたイベントにしています。毎年開催している社員旅行は、今年は沖縄のホテルを借りて、芸能人を呼んだ野外ライブなどで盛り上げ、社員のモチベーションをアップさせました。特にその「仕組み」を作ることが、CEOに求められる大切な仕事ではないでしょうか。例えば人事についていえば、人は給料だけを上げてもついてきません。評価制度や組織体制と関連付けながら、社員全体の士気を高める必要があるのです。

  2つ目が「常にビジネスモデルを考え抜くこと」だと思います。会社員時代からあらゆる事業を研究してきましたが、それは今でも終わることはありません。ハウスウェディング事業にしても、展開できる店舗数には限界があります。今からウェディング関連ポータルサイトの立ち上げや金融事業など、新たな展開を試みています。そうした新しいビジネスモデルを生む「仕組み」を作ることがとても大切です。アイデアが生まれるのは、日ごろからお客様と接している社員からがほとんど。そうした声の「受け皿」を用意するのがCEOの役割です。

  3つ目が「会社の目標を明確にすること」。つまり、会社のベクトルを1つに合わせることです。会社が大きくなると、多様な価値観を持った人が入社してきます。CEOは、会社が向かうべきビジョンを示し、彼らを1つにまとめ上げ、目標に向けて全力で向かわせる必要があります。そのためには、経営トップ本人が明確な目標を持ち、それに向かって行動していなければなりません。創業した当初、当社が将来上場するなんて、誰も予想できないことでした。それでも僕は、「3年で上場させる」と宣言し、会社を大きくする努力を惜しみませんでした。当時は、出資者になってほしいと思った起業家に、僕がサンタクロースの格好をして事業計画書を届けたこともあります(笑)。それも目標達成したくて行った、1つのパフォーマンスなんです。

  経営者には、部下を怒る人と怒らない人がいますが、僕はどちらかというと前者ですね。ときどき反省するときもありますが、僕が怒るのは目標達成に必死で一生懸命だからなんです。僕が幹部にそういう姿勢を見せることで、幹部も目標達成にこだわるようになり、親を見て子が育つようにその意識が全社に浸透する。目標達成のプロセスは苦しいものですが、達成できればその苦しみは喜びに転化し、次は自分で目標を立ててみようと思うものです。「野尻塾」で伸びている人も、自分の目標が明確になった人なんです。

  趣味でも恋愛でも、目標を立てることを習慣にしましょう。そしてその目標に向かって、どこまでどん欲になれるかが勝負です。どん欲さにはキリがありませんし、人が褒めてくれることでもないのですが、やはり情熱的にガムシャラに努力した人が成長するし、早くゴールにたどり着けることは間違いありません。

あくまで「野尻流」を貫く

  創業当時、野尻社長は家賃たった2万円の事務所を借りたというエピソードがある。ライブドア堀江貴文社長などと親しく、ときに“ヒルズ族”と呼ばれる野尻氏だが、南青山に構える本社はコンパクトで派手さはない。「六本木ヒルズに基地(本社)を置くと、業績が伸びたり、事業シナジーが生まれるのであれば移転すればいいと思うけど、社員のモチベーションが多少上がったとしても、売り上げが倍になるほどではないでしょう」。石橋をたたきながらボートまで用意する堅実さで、史上最短の東証2部上場を果たした。

(取材・文/角田 正隆)

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