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LEADERS INTERVIEW
for Career Management

「競争で自分を磨け!」


株式会社
シンプレクス・テクノロジー
代表取締役社長
金子 英樹氏


1987年一橋大学法学部卒。同年アーサーアンダーセン アンド カンパニー(現アクセンチュア)入社。90年金融システムパッケージベンダーのキャッツ ジャパン入社。91年ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社(現日興シティグループ証券)入社。97年シンプレクス・リスクマネジメント設立。2000年シンプレクス・テクノロジーに社名変更、同年代表取締役社長就任。02年JASDAQ上場。04年東証2部上場。05年9月東証1部上場を果たす。


競争組織で鍛えられた20代

 20代のころはよく働き、死ぬほど遊びましたね。1日15時間働き、土日も半分以上働きながら、借金して寝ずに遊ぶんです(笑)。そうやって過ごした20代が、今思えばとても良かったのだと思います。

 新卒で入社したアンダーセンには学校に似た人事システムがありました。大量の新卒者を採用し一斉に競争させ、3カ月に1度、10段階の人事評価を行い、上位にランクインし続ければ「飛び級」、下位の成績が続くと「留年」する仕組みです。システムコンサルティングという仕事に全く興味がなかった私も、誰にも負けたくないという一心で仕事に励み、厳しい競争によってあらゆる側面から鍛え上げられました。絶対的な価値より相対的な価値を重視して物事を考える私には、競争組織が向いていたのかもしれません。

 では、いかに競争に勝つか? 同期にはシステムが好きな人やシステムセンスに優れた人が多数いました。一方、私はシステムに全く興味がないし、センスもありません。そんな私が実践したのは、すべてを丸暗記してしまうこと。システムの構成や構築方法などを無理やりにでも頭にたたき込んだのです。その上長時間働き続けましたから、量的にもほかの人に負けない自信がありました。

総合力で勝負

 アンダーセンのような組織の場合、難しいプロジェクトには優秀なコンサルタントが登用され、彼らが有能な若手を自分のプロジェクトに引き入れようとします。若手はそこで貴重な経験を得ることで、優秀なコンサルタントに育ちます。ですから、優秀なコンサルタントのそばで仕事をさせてもらうことが競争に勝つためにも欠かせない条件でした。とはいえ入社直後は「どんぐりの背比べ」のような状況で、誰が優秀なのかはっきりしません。今、経営者として人を使う立場になり、あらためて感じるようになりましたが、人に何かをお願いしようと思ったとき嫌な顔をするような人には、どんなに優秀でも仕事を頼みたくないものです。気持ちよく仕事を引き受けてくれる人に頼みたくなるのは当然ですから、新人時代、私はどんな仕事でも「はい、喜んで!」という姿勢で仕事をやらせてもらいました。そうして1年もたつと、実力の差が歴然と表れてきました。

 競争組織で修練を積むうちに、自分が「総合力」で勝負するタイプなのが明確になったのも収穫でした。システムコンサルティングの仕事には、コーディングやプレゼンテーション、アカウント管理など、複合的な要素が含まれています。私の場合はアカウント管理など、クライアントとの信頼関係を構築する分野にたけていましたから、それだけに特化して会社全体の上位10%に食い込むことも可能だったかもしれません。しかし、これではコーディングは得意だけれど、クライアントとの折衝が苦手といった、ほかの分野に特化している人と差が付きません。決してコーディングなども苦手ではなかった私は、すべての領域で上位10%入りを目指すことで、最終的に全体の上位3%に入ることができたのです。

 この「総合力」で勝負する戦略は、当社の経営戦略にも応用しています。当社は大手システムインテグレーター(SI)とは異なり、上流のシステム設計から保守運用まで、一貫して自社で引き受ける体制を整えています。各分野において正社員中心で構成された当社メンバーが質の高い仕事をすることで、業務を外注する大手SIを寄せ付けない高い競争力を確立しています。


CEOとは覚悟している人

 CEOというのは、結果に対して責任を持つ人であること、それを覚悟している人であることが第一条件だと考えています。システム業界では、納期も予算も守らないのが当たり前といった風潮がありますが、何の実績もない創業当初の当社を見込んで発注してくれた担当者に対し、その期待を裏切る納期遅れや予算オーバーは断じて許されることではありません。お客様の担当者は一社員です。当社に任せて失敗したら、社内で致命的なダメージを受けるリスクを背負っています。その上、自分たちが素晴らしいシステムだといって売り込んでいるのですから、それを実現させて証明する責任があるはず。そういう気持ちが強かったものですから、当然チェックは厳しくやりましたし、いいかげんな仕事が許せませんでした。

 若手のメンバーを見ていると、目の前の仕事が自分のキャリアにとって得か損か、必要以上に心配しているように感じます。しかし、お金をもらって仕事をしているのですから、頭を使って相手の期待以上の結果を残すしかないと思います。10年前、インターネットがこれほど世の中を変えると予想した人が少なかったように、自分が考える「得な仕事」が決して正しいとは限りません。どんな仕事からも学べることはあります。相手に110%の結果で返すのが当然だと思って、目の前の仕事に全力で取り組んでください。

「チャンスは狙ってつかめ」

 デリバティブ関連システムの腕を磨くために、この分野で「帝王」と呼ばれたソロモン・ブラザーズに入社した金子氏でしたが、配属されたのは花形のデリバティブの部門ではなく、傍流のシステム部門だったそうです。しかし、どうしてもデリバティブのシステム構築にかかわりたかった金子氏は、まずシステム部門でトップになることを目指しました。当時注目されていなかった中国人・インド人エンジニアを積極的に活用し、ほとんどの業務を彼らに任せられるよう育て上げました。そうしてできた空き時間にデリバティブ部門のシステム開発をタダ働きで“受注”するようになり、そのうち自然とその部署に異動できたそうです。チャンスがないと嘆いていても始まりません。自分が望むものを得るためのステップを思い描き、行動することが大切です。

(取材・文/角田 正隆)

日経BizCEOは、日経Bizキャリアと世界最大の公式MBA組織日本支部を兼務するグローバルタスクフォース(GTF)の共同サイトです。

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