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MBA流キャリアマネジメント塾
MBAドリル
eラーニング「通勤大学MBA実践講座」

 

早稲田大学ビジネススクール経営専門職大学院

梅津祐良教授

(プロフィール)

東京大学社会学科卒。米国ミネソタ大学産業心理学修士課程、米ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント修了。1963年、日本放送協会(NHK)に広報・人事部門に従事。1970年、モービル石油に入社後、人材開発部長、モービル・オイル・ニューヨーク本社人事アドバイザー、モービル石油取締役人事担当などを歴任する。1998年から現職。専門は、HRM(人的資源管理)、組織開発、組織設計、リーダーシップ、グローバル経営。著訳書に「MBA講座 人材尊重マネジメント」(日本経団連出版)、「革新型リーダーシップ」(ダイヤモンド社)、「ビジネスEQ」(東洋経済新報社)など多数。64歳。

 

一生チャレンジしたい。そこに留まったら駄目。
MBAもスタートラインに過ぎない。

 早稲田大学ビジネススクールで教授を務めている。決して学者出身ではない。「35年にわたる企業でのキャリアで蓄積した知識、経験、7年間の海外勤務と学習から得た経験を体系的に伝えたい」と理論と実践のバランスを説く。

キャリアからも、バランスの良さが窺える。それもハイレベルな均衡を保つ。

 NHKで人事部門に配属された時には、本格的な産業心理学を究めたいと米国ミネソタ大学に留学。転職先のモービル石油では経営全般の基礎知識も身に付け視野を広げるとともに、専門であるHRMを深めたいと米ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメントにMBA留学を果たした。常に勉学心を持って新しいことを学び続ける姿勢を大切にする。「ケロッグではコトラー教授をはじめ世界的に高名な専門家からモノの見方、考え方を叩き込まれた」と振り返る。それでも「MBAはスタートラインに過ぎない。そこから深めていくことが大切。貪欲に勉強しなければ遅れてしまう」と言い切る。

 もちろん、理論の修得だけで満足しているわけではない。理論とプラクティスを実践する場も探し求めてきた。モービル石油への転職も、それがきっかけであり、同社のニューヨーク本社をはじめ7年もの期間に渡り世界各地で活躍できたのも、こうした姿勢があったからこそだという。

 南米エリア7カ国の人事担当コーディネーター、各国マネジャーの教育トレーナー、南アメリカや西ドイツでの駐在と実に精力的に動いた。「世界にはいろいろな人々、さまざまな人種がいることを痛感した。グローバルな視点で捉えるマインドセットを磨かれた思いがする」。

 モービル石油を退職後、米国メドトロニック社に在籍していた折に、早稲田大学から新たに誕生する独立大学院の教授にと誘いがかかった。「いつかは人に教えたい」という願望があったので教職には興味があった。

 「大学院は、とにかく楽しい日々であり、チャレンジングな日々」。HRMの講義では、「人材を最高のキャピタル(資本・資産)として考える」という軸を提示する。それでもHRMの場合、アカウンティングやファイナンスとは違い国ごとでアプリケーション(適用法)は違ってくる。「米国で教えていることをそのまま輸入すれば良いものではない」。しかも、研究科には留学生が多い。人材観には、それぞれの文化や慣習が絡んでくるだけに内容を理解してもらうためには毎回かなり気を遣う。それだけに、勉強しなければという思いに駆られる。

 「70歳まではこのまま教授を続けたい。その先の自分はまだ見通していない」。大学での定年は70歳。それまでは、日本人、日本企業だけでなく世界に広くグローバル経営、グローバル化の在り方を提示し続けるつもりだ。書籍の執筆や翻訳も並行させながら。「翻訳というのは知的鍛練の場」。最先端の理論に関わり自分をアップデートする姿勢はこれからも貫きたいとする。最近、メドトロニックのCEOであったビル・ジョージ氏が書いた「オーセンテック・リーダーシップ」の翻訳を終えたばかりだが、まだまだ勢いは留まりそうもない。

 「一生チャレンジしたい。そこに留まったら駄目」。挑戦することを楽しむかのような日々は、まだまだ続きそうだ。

今回のキーワード「グローバル・キャリア」

 最後に、キャリアデザインに関するアドバイスを3つ頂いた。
(1)10年後の自分を思い描いてアクションプランを立てる。ビジョンに基づいたキャリアデベロップメントを。(2)生涯勉強を続ける。
(3)プロフェッショナルな語学力を身に付ける。
「Think and Act Globally」の時代とされる21世紀。グローバル・キャリアの形成への参考にしてほしいものだ。

(取材・文/袖山俊夫)

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