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MBA流キャリアマネジメント塾
MBAドリル
eラーニング「通勤大学MBA実践講座」

 

ケロッグ日本同窓会事務局

間瀬陽子さん

(プロフィール)

国際基督教大学教養学部卒。1992年、千代田生命情報システム(現在のCLIS)に入社し、SEを務める。96年、日本オラクルに転職。製品マーケティング、広報宣伝に従事する。同社を退社後、米国ノースウエスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメントに留学し、MBAを取得。帰国後、ベイン・アンド・カンパニーを経て、2004年より現職。35歳。

 

「思い立ったら、すぐ行動する」精神で夢の実現を目指す

 「思い立ったら、すぐ行動する」。生来の積極的な性格でさまざまなジャンルに挑戦してきた。

就職では、「どうせイチからやるなら、自分の苦手なところからやっつけてしまおう」と千代田生命情報システムにSEで入社。システムプログラミングの知識はまったくなかったが、1年後には情報処理技術者1種を取得。3年ほどで実務のコツをつかみ、ようやくSEとして自立できるようになった。

 転職した上司から「得意分野を生かすことも考えては」と、日本オラクルのマーケティング職に誘われた。同社の日本法人は製品開発をするわけではない。米国本社への戦略提案とその実践が主体であった。だが、MBAホルダーが多いヘッドクォーターはメソドロジー、フレームワークなどを駆使し、意思決定の速さが日本法人とは比べ物にならなかった。「手探り状態のままでは彼らに通用しない。同じビジネス言語を話せなくては」。BツーBビジネスそのものを体系立って学ぶ必要性を感じた。

 折しも、民間企業が新設したプロフェッショナルスクールの第1期生に応募した。試験には合格したものの、驚いたことに担当者から、「君なら、むしろ米国の正規ビジネススクールに行き本格的に勉強した方が良い」と助言された。「自分もMBAに」。そう思い立ってからの行動も早かった。留学予備校のGMAT模擬試験を受験したり、集中講義に参加。1998年には、マーケティングを専攻したいと米国ノースウエスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメントに志願した。

 「かなり自分でやりたいことをやれたかな」と当時を振り返る。用意された授業を受けるだけでなく、自分で組み立てる授業科目にも積極的に参加。企業から預かったプロジェクト案件に対し、コンサルティング提案をするラーニング・スルー・エクスペリエンス(LEAP)では、チームワークの重要性を学んだ。シカゴ子供博物館のマーケティングの仕事を1学期にわたり経験した際には、学校側と交渉し単位として認定してもらった。

 キャリアに対する意識という点では、アジアからの留学生から学んだ。発展途上国からが多かっただけに、「自分の国を引っぱっていきたい。変革していきたい」という強い意志、責任感から刺激を受けた。「米国人学生のように肩書きとしてのMBAを求めているのではない。問題意識、危機意識が高いゆえに、何事に対しても非常にアグレッシブ」だと感じた。

 ポストMBAでの選択として、当初はコンサルタントになるつもりはなかったが、話を聞く機会があった戦略系コンサルティングファーム、ベイン・アンド・カンパニーのディレクターに将来やりたいことを打ち明けたところ、こう助言された。「今は蓄えの期間。戦略系に来ることで数多くを学ぶことだろう。それも、なるべく早いタイミングで来るべきだ」。人生のターニングポイントには、いつも助言者の存在があった。

 コンサルタントに転身後、最も苦労したことは発想を転換する難しさであった。いざ課題を前にしても、なかなか経営者の視点に立つことができない。結局、1年半はもがいた。「できる人、できない人ではいったい何が違うのか」と観察し続けることで、一つひとつがクリア。2年目以降は、仕事が楽しくてしょうがないという日々を迎える。自分のプライベートがまったくなくても気にならいほど没頭したが、結婚を機に家庭を最優先するライフスタイルを選択し、ベインを「卒業」することにした。

 2004年3月から、ケロッグ日本同窓会事務局スタッフに就いた。日本社会に対して、ケロッグスクールの認知拡大や存在価値を啓蒙する仕組み作りを担当している。同窓会員は、日本だけで500人。「価値のあるデータベースだが、残念ながらフル活用されているとはいえない。NPO事業の立ち上げを実践するつもりで、さまざまな活動をスタートしたい」と言う。1年間はボランティアとして働くつもりだ。

 コンサルタントも、ボランティアスタッフになったのも、膨らみ続ける夢への挑戦への一環といえる。「日本の子供向けの博物館、キッズミュージアムを経営したい。日本の伝統、奥深さをもっと知ってほしい。楽しむ機会を作ることができれば」と。子供のころに、海外から日本に戻って来た時に感じた、日本に対する思いを今でも大切にしている

 それでも、あと10年はかかると予測する。「NPOも組織だけに、マネジメント、資金調達と人材ネットワークの構築が重要」。まだまだ実践すべきことは多いが、確かな手応えは感じつつあることはその表情からもうかがえる。

今回のキーワード「経営者の視点」

 米国大統領を務めたセオドア・ルーズベルトは、何か決断を要する度に執務室に飾られていたリンカーンの肖像画を見上げていたそうだ。「リンカーンなら、こういう状況でどうしたかを考えるのだ。彼ならどうするか」と。同様に、ビジネスパーソンとして成長したいならば、常日頃から、経営者ならどう考えるかというシミュレーションをしておくことが得策となる。

(取材・文/袖山俊夫)

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