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MBA流キャリアマネジメント塾
MBAドリル
eラーニング「通勤大学MBA実践講座」

 

シカゴ大学ビジネススクール卒業生

朝倉まゆみさん

(プロフィール)

金沢大学卒業。地方公務員として勤務後、金融業界に転職。その後、シカゴ大学経 営大学院に留学。MBAを取得後、米系投資銀行や外資系の人事・戦略系コンサルティ ングファームなどで活躍。2004年6月からはフランスに留学する。

 

MBAには柔軟な生き方ができる リソースに満ち溢れている

 「いろいろな場面での出会いがすべて自分の財産になるはず。生きている限りは多 様な考え、価値観をリスペクトしながらさまざまなことを経験し続けたい」

 地方公務員、金融機関、MBA、コンサルティングファーム。多様なキャリアを描 いてきた。「MBAだからという枠で自分の人生をガチガチにしたくない。もっと自 在な生き方をしたい。さまざまな経験をしたことで、自分の興味が広がっただけ」

 地方公務員から金融業界へが最初の転機。「とにかく動きが早い。案件が続々上がっ てくる。期待通り刺激の連続」。金融の専門知識は独学で身につけクリアした。語学 力の不足も英会話学校に毎日通うことで補った。しかし、興味が上がるに連れて、現 状のままでは満足できない自分がいたことに気付く。

 「ビジネスを統括的に学ぶ必要を感じた。また、金融だけでなく、組織、マーケティ ングなど一通り学ぶことは将来必ず役立つはず。MBAにチャレンジしたい」。同僚 にビジネススクールの卒業生がいたこともあって、MBAが身近な存在に思えたこと も要因だ。決めたのは退職の前年であった。

 入学したのはシカゴ大学経営大学院。数学万能というイメージで知られ、数多くの 金融や経営戦略の専門家を育成してきた名門ビジネススクールだ。「金融をベースに ゼネラルマネジメントを学びたい」というのが狙いであった。

 シカゴでの2年間の厳しい学習は必修プログラム「LEAD(Leadership  Effectiveness and Development)」で幕を開けた。グループ単位でチーム構築の 練習をしながら、リーダーシップ・コミュニケーション能力などを鍛えるというもの だ。結局、卒業までには20のコースを修了。意図通り、かなり多彩な分野を勉強した。 「とにかく勉強になった」と振り返る。

 ポストMBAの選択肢として組織・人事系分野への転職に興味があった。だが、当 時の日本ではこのジャンルの注目度は低い。MBAホルダーの採用もほとんどなかっ た。「時期尚早では」と判断。結局、金融業界に復帰した。

 数年間、米系投資銀行に勤務した後、人事系コンサルティングファームへと転職。 M&Aのデューデリジェンス、給与・福利厚生体系、年金などに関するプロジェクト に携わり、希望した仕事は一通りできたもののどうしても満足できなかった。「この ままでは日本の大企業を変革していくようなビッグ・プロジェクトを手がけられない」 。10数人規模という少所帯企業の限界を感じた。

 その後、米系大手コンサルティングファームに移る。クライアントには日本の大企 業も多かった。ここでは「別の視点からプロジェクトに携わることができた」と自負 する。

 気が付くとMBA取得から10年経っていた。ビジネススクールを卒業した際の決意 がふとよぎった。「10年を区切りにアカデミックな環境で改めて勉強し直したい、新 たな出会いや学びを通じてさらなる自己実現に挑みたい」。

 2月からは準備を兼ねて渡仏。いよいよ6月から本格的な留学が始まる。コミュニ ケーション論、組織論をさらに深めるつもりだ。「学位は結果に過ぎない。学べると ころはいろいろなところにある」。今は欧州を拠点にすることを考えている。

 投資銀行、コンサルティングファームを通じて数多くのMBAホルダーに会ってき た。「MBAを取得して、この仕事につけたから成功、もはや学びは終わり」とは考 えたくない。もちろん、自分にとってビジネススクールで学んだことやMBAを取得 したことは有意義であったが、それが全てではないと認識する。

 「もっと柔軟に生きたい」。一つひとつの出会いや経験を積み重ね、新しいことへ チャレンジし続けることを大切にすることが『キャリア形成』につながるはず。そう 信じている。

今回のキーワード「多様なキャリアパス」

 世界的なエグゼクティブ・サーチ、日本コーン・フェリー・インターナショナル代 表取締役社長の橘・フクシマ・咲江さんは、英語教材の販売会社、ハーバード大学の 日本語教師、戦略系コンサルティングファームを経ており、そのいずれもが「キャリ ア」に含まれると指摘している。日本のメディアでは「多様なキャリアパス」をと掲 げるが、実は女性の方が先行している気がする。まだまだ単一のキャリアパスでしか 社会を見渡せない男性陣が多い。自分の人生を考え直したいので、ここで一旦別のこ とをしようという大胆さ、自分を「リセット」することを恐れない強さにたじろぐこ とはないだろうか。

(取材・文/袖山俊夫)      

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