教育コンサルティング会社のホープス社長で、今後さらに活躍が期待される女性起
業家の1人だ。世界トップレベルのスポーツ選手・コーチ・審判より学んだパフォー
マンス技術、交渉術、コーチング技術を、人事教育プログラムに適用しようと指揮を
とる。
社長歴は約4年。「すごく成長させられる。自分の短所は、あまり人に頼らず
自分ですべてをやってしまうこと。知人の社長から、『それではうまくいかない』
と忠告されたものの行動に移さずじまい。結局、人を使わないと会社はうまくいかな
いと分かったのは自分が交通事故で入院した時。ここから、自分はプロデュースする
側に回りました」と振り返る。
今でこそ、ビジネスの世界でのハイジャンプを追い求めているが、体操競技の選手
やコーチとしてオリンピックに目標を定めていた時期が長い。米国では、体操の上王、
ナディア・コマネチを育てた伝説のコーチ、ベラ・カロリー夫妻のもとで指導を受け、
才能の発掘方法や選手の育成法を学んだ。帰国後には、オリンピック指定強化クラブ
で体操を指導し、数々の海外遠征にも同行した経験を持つ。
「オリンピックという目標があるから耐えられた。正直言って自分を無理に納得さ
せていたところも多かった気もする。英語が話せることで指導とは無関係な総務的な
役割が多くなった。このままでは、とても、愛情を持って体操の指導をする時間が持
てない」。不安は的中し、オリンピックへの出場権をかけた世界選手権で結果を出せ
なかった。一挙に、挫折感が襲った。「将来は、自分で自分の人生を選びたい。いつ
かは自分の組織を持てる人になりたい」。目の前が真っ白になるような状態のなかで、
そう決意をした。
だが、しばらくは人生の空白期を経験する。「スクールに行けば何とかなるのでは」
と同時通訳養成スクールを含め多数の学校へ通った。「所属のないプータロー人生が
恐いと感じたのかもしれない」。とても集中して勉強する気になれなかった。
心のバランスを取り戻し始めた頃、留学予備校の講師が慶應義塾大学大学院経営管
理研究科(慶應ビジネススクール、以下KBS)への入学を勧めてくれた。「人を教
える、育てる、人とコミュニケーションすることが好きな自分に正直でありなさい」
とアドバイスされた。
KBSでの2年間は実に多忙であったという。学資を稼ぐために平日の睡眠は2時
間程度。勉強と並行して塾の運営までこなす日々が続いた。「できれば、MBAの取
得に集中したい」という願いを込め、賞金をもらえるビジネスプラン・コンテストに
も積極的に応募した。ニュービジネス協議会のコンテストでは10万円を獲得。続く、
ゼネラルエンジニアリングのコンテストでは事業計画書が最終選考に残ったものの
「10カ月以内に会社を立ち上げることと」という受賞の条件をクリアする自信はなかっ
た。「ビジネスは始めたいが、今やってもうまくいかないのでは」。主催者側には、
KBS卒業までの猶予を当初もらったが、「まだ準備不足。基本的な教育学の知識が
欠けている」と、ハーバード大学教育大学院修了後の事業化をと説得した。
結局、会社設立は2000年12月。社名はベラ・カロリー夫妻が運営する体操クラブで
自分が指導していたチームの名前「Hopes Team」に基づき、HOPES(ホープス)と名
付けた。文字どおり、未来を担う希望の星を育成、指導するための教育コンサルティ
ング事業に専念している。
「これから5年、10年は教育関係の仕事をしているはず。良い作品を作って、印税
収入を得ているのでは。コンテンツの質も上がっているはず」と自信をのぞかせる。
最近、スポーツ関連の仕事も増えてきたという。「スポーツが自分を追いかけてくる」
。ビジネスとの融合が進むスポーツだけに、その存在価値はますます高まっている。
「10年後には20億以上の売り上げをあげていたい。その規模の社長は皆信念を持ち、
『人』としてカッコイイ。ああいう人になりたいと思わせるオーラがある」。
今は自分の人生を自分で決めているという満足感が全身からみなぎっている。