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株式会社イー・ロジット

代表取締役CEO

角井亮一氏

(プロフィール)

上智大学経済学部経済学科を3年で単位を修了し、渡米。1992年6月、ゴールデン ゲート大学大学院にてMBA(マーケティング専攻)を取得。帰国後、1993年4月船 井総合研究所に就職。不動産会社への転職を経て、98年3月に光輝物流に入社。在籍 中に考案したビジネスモデルを実現するために2000年2月、イー・ロジットを設立。 代表取締役に就任する。無料メールマガジン「ロジスティクス思考的経営話」の発行 人、大阪経済大学などで講師も務める。著書に「よくわかるIT物流」(日本実業出 版社) 。35歳。

ビジネスの「基本姿勢」を確立することが大切。 物事にまっすぐ向き合えれば必ず成長していけるはず

 「MBAのエッセンス、思考プロセス、考え方は今の仕事でかなり役立っていま す。 でも、実務は教科書そのものではありません。内容がそのまま使えるわけではないの です」  そう語るのは、ゴールデンゲート大学でMBAを取得し、現在はイー・ロジットで 戦略物流の支援に携わる角井亮一氏だ。

 角井氏は自分が成長するために何が必要かを常に模索してきた。「海外にまた行き たい」という思いから大学3年時に留学を決意。ゼミの恩師、田中利見先生から「ど うせだったらMBAを取得してきたらどうだ」と勧められ、サンフランシスコにある ゴールデンゲート大学に入学した。大学院のレベルの高さに驚愕することもあった が、 持ち前の計数能力を生かし最新理論や手法の修得に励んだ。特にマーケティングで は、 メリルリンチ証券のバイスプレジデントから新製品開発の講義を受けるを聞く機会も あり、大いに刺激を受けた。クラスにはヨーロッパ系、アジア系の留学生の他、働き ながら大学院に通学する目的意識の高い米国人ビジネスパーソンも多く、多彩な価値 観が交錯する環境を満喫。MBA取得後に帰国し、船井総合研究所に入社したのも 「もっと色々な経営を見てみたい」という思いからだった。

 「MBAで学んだことをそのまま実践しようとはまったく考えていませんでした。 考え方の違いを吸収してみたかったのです。それでも正直言って、ビジネススクール とはだいぶ違うなというのが本音でした」

 米国型、大企業型の経営手法という性格がMBAにはあるが、角井氏が就職した船 井総合研究所の顧客は中堅レベルの典型的な日本型企業が多かった。酒類メーカーや 卸、小売業のコンサルタントとして3日連続で現場に泊り込むなどリアルな経営の厳 しさを体験する。その後何度か困難に直面することがあったが、「あの頃と比べれば まだまだいけるはず」と勇気が自ずとわいてきたという。

 その後、角井氏は98年3月、光輝物流に転職。主に物流コンサルティングおよびア ウトソーシングに従事し、特に物流コストの削減を目的とする案件を積極的に手掛け た。自身が考えたビジネスモデルを適用することで4割の削減を実現するという事例 もあったほどだ。周囲の後押しもあり、起業を決意。2000年2月にはイー・ロジット を設立し、代表取締役に就任する。

 今、同社は完全なサードパーティとしてBtoC・BtoBベンチャーをはじめ、多く の企業の物流やシステム構築の支援を行い、企業成長を側面からバックアップしてい る。角井氏は物流最大の無料メールマガジンも発行し、物流の最新キーワードから現 場改善の必 要性を分かりやすく説く。ここでも、MBAで学んだ発想、視点が役立っているとい う。

 「仕事においても、私生活においても重要なのは『基本姿勢』です。謙虚であれば 多くを学ぶことができます。自分はキレ物だなどと思った瞬間に吸収力は失われてし まいます。物事にまっすぐ向き合えれば企業も人間もどんどん成長していくのではな いでしょうか」

 角井氏はMBAを取得したことで自分がどう変わったのかは、まだ具体的に描けな いものの間違いなく転機をもたらしてくれたはずだと断言する。ビジネスの「基本姿 勢」を確立させてくれた場であったことは言うまでもない。角井氏は自分がどう変 わっ たという過去形で表現するのではなく、今も尚こう変わりつつあるという進行形であ り続けたいと願っているのかもしれない。

今回のキーワード「レベルアップ」

 昔、お酒のCMに「少〜し愛して、長〜く愛して」というコピーがあった。角井氏 も、少しずつ無理をせずに確実にレベルアップしていくことが大切だと説く。一歩ず つ階段を上がっていくことだと。そのためにも、人と会うことを勧めている。同じレ ベルの人たちから注目されるようになったら、次のレベルに行き交流を深めていくと いうわけだ。世の中、スピード時代だけに、とかくせっかちになりがちなもの。一挙 にドーンとレベルアップできないものかと考えてしまうが、適策ではない。それを分 かっていても、あせってばかりという人が目立つ。

(取材・文/袖山俊夫)      

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