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MBA流キャリアマネジメント塾
MBAドリル
eラーニング「通勤大学MBA実践講座」

 

トーマツ コンサルティング株式会社

パートナー

浜田健二氏

(プロフィール)

1986年、慶應義塾大学理工学部を卒業し、日系大手精密機器メーカーにエンジニアとして入社。88年、外資人事系コンサルティング会社に転職。96年、同社を退社後に米国南カリフォルニア大学経営大学院に留学し、MBAを取得。98年、アーサーアンダーセン ヒューマンキャピタルに転職。03年、トーマツ コンサルティングに入社し現在に至る。共著に、「海外勤務社員の給与」(中央経済社)、「戦略的コンピテンシーマネジメント」「組織バリューマネジメント入門」(いずれも生産性出版)などがある。41歳。

 

人生の転機になったMBA留学。どこかで踏ん切りをつけたいという決断が今につながる

 MBAは仕事上の機会を広げるために、何が必要かを気付かせてくれる場である。そんな指摘をする人は少なくない。

 「MBAは、明らかに人生の転機になりました。海外経験もなく、英語も不得意、かつ自費留学という必死の思いで留学しましたが、今振り返っても勇気があったなと思います。それだからこそ、MBAを通してキャリアの選択肢が広がり、大きなプラスになったのだていると思います。辛い経験でしたが、今の自分何らかの心の支え、糧になりいました」そう語る、トーマツ コンサルティング株式会社で組織・人事関連のコンサルティングに携わる浜田健二氏だ。

 大学で機械工学を専攻しただけに、一度はメーカーでエンジニアを経験してみたいとメーカーに新卒入社したものの、湧き出てくるものを感じることができずにいた浜田氏。「このままではつまならない人生になってしまう。心機一転しなければ」と新天地を求めるようになった。自分が何をやりたいのかは、まだおぼろげであったものの、「経営者に近いところで働きたい」とコンサルティングファームに転職した。

 計数能力を期待され入社した人事系コンサルティング会社では、年金数理のアクチュアリーという極めて専門的な業務からスタートした。その後、人事制度のコンサルティングに並行して携わることができたこともあり、「多少は経営者に近い仕事ができるようになった」という意識を抱けたという。

 それでも、業務に集中するにつれて、ある思いが込み上げてきた。「自分には、経営の知識や経験が足りない。しかも、国際的な企業で活躍するためには、英語を使ってのコミュニケーションが求められる。どこかできちんとやらなければ、この先必ず後悔する。どこかで踏ん切りをつけたい」

 大学を卒業し、2社で10年のキャリアという節目の年、退職してMBA留学を決意する。留学先は、米国南カリフォルニア大学経営大学院(USC)のIBEARコース。「2年間のブランクは、何かと厳しい」と1年制のMBAプログラムを選んだ。

 留学先は、多様な文化が交錯する国際的なビジネススクール。米国やアジア各国のアントレプレナーや、大手企業・財閥の御曹司などが学生として多く在籍しており、「自分は一流の経営者になる」という彼らの姿勢から強い刺激を受けた。「自分なりのビジネス像をもっと真剣に考えなくては」と意識付けられた。

 「自分がプレーヤーになりたい」。帰国後に、アーサーアンダーセンに転職したのも、ヒューマンキャピタル(人事コンサルティング)のサービスをゼロから立ち上げることに魅力を感じたからであった。クライアントのニーズに必死に応えながら、創設から3年後には社員30人前後の規模へと成長。手応えをつかみかけていた。だが、その後発生したエンロンショックの余波で同社は大きく揺れ動き、浜田氏は03年、前職のメンバーの一部とともにトーマツ コンサルティングに転職することになった。

 組織が求める人材像・組織像をベースにした人事戦略・人事制度の構築、導入サポート。退職金制度や海外給与体系、業績賞与、セールスインセンティブの設計。トレーニングなどによる意識改革。浜田氏はこれまでも組織文化の構築、意識改革を目的とする業務を数多く手掛けている。「制度改革だけをやっていても前に進まない。組織を本当に変えるには、会社の経営理念、価値観をしっかりと作り伝えていかなければ」と最近では、組織バリュー(個々の企業"らしさ")を核にしたマネジメントによる組織変革コンサルティングに注力している。

 「やっと経営の本質的なところが分かってきたのかなと感じています。経営の根幹である経営理念、ビジョン、価値観といった領域に踏み込めるようになり、自分が求めていたやりがい、充実感を味わえるようになりました」。浜田氏はそう打ち明ける。MBAで経営戦略、マーケティング、アカウンティングなどの理論を総合的、網羅的に修得し、経営のために必要なスキルを棚卸しした経験が「自分に安心感を与えてくれているからこそ」と浜田氏は確信している。だが、自分の中には「まだまだ、MBAで経験したことを活用できていない」という歯がゆさもあるようだ。

 「いつかは、自分の事業を構築したい。とはいえ、自分は目の前の課題を一つひとつクリアしていくタイプです。MBA留学もその一環でした。着実にキャリアステージを広げていきたいと考えています」

 組織バリューを核にしたマネジメントは、自己変革にも応用できる。「自分の存在意義は何か?」「この会社で何をしたいのか?」「自分らしさって、何?」を考え、忘れかけていた自分への思いを呼び起こす。浜田氏は、クライアントだけでない。自分自身にも一つひとつ問いかけているのではないだろうか。

今回のキーワード「リスク」

 妻子を連れてのMBA留学。取得後の保証は何もなかっただけに不安もあったことだろう。当時ロサンゼルスで飲んだ安いカリフォルニア産のワインを見る度に、留学した頃を思い出し、目頭が熱くなってしまうという。転機に対して、どう行動するか。どこかでリスクを取らなくては前に進まない。それこそ、踏ん切りをつけなくてはいけないのだ。日本人は、リスクを取るのはどうも苦手だが、そのままでは何も変わらない。

(取材・文/袖山俊夫)      

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