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MBA流キャリアマネジメント塾
MBAドリル
eラーニング「通勤大学MBA実践講座」

 

ニッセイ・キャピタル株式会社

投資部 チーフベンチャーキャピタリスト

池上重輔氏

(プロフィール)

1989年に早稲田大学商学部を卒業後、英国国立ケント大学大学院にて国際政治学修士号、英国国立シェフィールド大学院にて国際政治関係論修士号を取得。93年に帰国し、ボストン・コンサルティンググループで戦略立案・実行支援を行う。95年からマスターフーズでブランドマネジャーを担当。97年、英国ケンブリッジ経営大学院に留学し、MBAを取得。留学中、GE(ゼネラル・エレクトリック)ヨーロッパでプロダクトマネジャーとして1年在籍。99年からソフトバンクECホールディングスで新規事業統括部門のディレクターとして数社の役員を歴任する。2002年、ニッセイ・キャピタルに転職。チーフベンチャーキャピタリストとしてベンチャー企業への投資・育成に携わる。現在、グロービス・マネジメントスクール講師、日本ベンチャーキャピタル協会のベンチャーキャピタリスト養成講座講師も務める。著書に、「通勤大学実践MBA事業計画書」などがある。38歳。

MBAで身に付けたグローバルな自信を挑戦へのエネルギーとする

 池上重輔氏が、英国国立ケンブリッジ経営大学院に留学し、MBAホルダーとして帰国したのは5年前の33歳のときだ。そして、この留学体験こそが現在につながる最初のターニングポイントであったと池上氏は振り返る。

 「ケンブリッジのMBAでグローバルな自信が付きました。最初に勤めたコンサ ルティングファームではパフォーマンスの良いほうではなかったと自分では思っ ており、正直自信を失っていたこともありました。しかし、ビジネススクールで は周囲の協力もありましたが、トップ3以内で卒業できました。しかも、世界の GEでヨーロッパ唯一の日本人マネジャーとして仕事をして結果的にトップパ フォーマーの評価をもらったという自信も大きかったです。自分がどの程度通用 するのか見てみたかっただけに、嬉しかったですね」

 ケンブリッジで最も興味をひいたのは『ベンチャーマネジメント』のクラス。 マーケティングやストラテジーなどは既にコンサルティングファーム時代に業務 を通して体感していただけに系統だったおさらいといった印象だった。だが「こ の科目だけは当時良く理解できませんでした。それだけに、何か面白そうだとい う印象がありました」という。やみくもな自信を持って自分を鼓舞するクラスメ ートの生き方に驚きながらも、いつしか「自分も何かインパクトが大きいことを したい」という思いが強まってきたことを意識していた。

 それでも、起業の難しさは熟知していただけに、むしろ新事業を興す上での資 産がある上に裁量権の大きい会社で働く方が社会に対してインパクトがある事業 に取り組めるのではと考えた。結局選択したのは、インターネットとベンチャー で世界を席巻していたソフトバンク。「ここで仕事をするのがグローバルレベル で最もダイナミックである気がしたのです」ビジネススクールの同級生も羨ま しげな視線を送ってくれた。

 ソフトバンクでは、新規事業統括部門のディレクターとして事業開発の現場に 数多く携わった。大きな失敗も含めて刺激的な日々を体感できた半面、ある疑問 が何度もこみ上げてきたことを覚えている。「日本というのはベンチャーが 育っていくには優しい環境ではない。ある程度育つまでは、できれば信用のある 企業が見守る必要があるのでは」

 2002年、日本生命の投資会社である「ニッセイ・キャピタル」に入社。つい にプレイヤーからキャピタリストへと転身することとなった。現在は直接投資し た企業10社以上のポートフォリオを担当し、そのうち数社は非常勤役員として も経営に参画している。

 「十二分に堪能しています。どこをとってもベンチャーキャピタル(VC)の 仕事は面白いですね。会社の成長プロセスを一緒になって共有できるのですから。 もちろん中には、滑りも転がりもあります。色々な業種を見ることもできます。 何と言っても、VCはビジネススクールで学んだことを総動員できるビジネスだ けにやりがいがあります」

 最近、ベンチャー企業の経営者を目指すビジネスパーソンに助言する機会が増 えたという。「過信と自信を区別しながらチャレンジしてほしい。この2つの感 覚には微妙な差があるからです。できれば、スマートな過信ぐらいであってほし い。どこかでこれってフライングしていないかと考えることが大切なのです」池 上氏はこうアドバイスすることにしている。

今回のキーワード「自信と過信」

 今夏アテネで開催されたオリンピックでは、日本人選手の活躍が目立った。海 外遠征の機会が増えたこともあるのだろうが、ものおじした表情はあまり見かけ なくなった。遠征先での大会、試合で成果を収めたことで掴んだ自信もあるのだ ろう。本番でも実にイキイキとしていた。「自分は(自分たちは)世界に通用す るプレイヤーなんだ」と。こうした思いに到るまでには相当な鍛練が必要なのは いうまでもない。だが、それだけでも世界という舞台で勝利することは難しい。 持っている自信で勝てればそれで良い。ただ、自分を多少過信するぐらいでない と潜在的な能力を引き出すことはできないからだ。

(取材・文/袖山俊夫)      

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