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株式会社ニューズウォッチ

代表取締役社長

金田 直之氏(41歳)

(プロフィール)

広島大学卒業後、1986年大手金属メーカーに入社。社内の派遣制度を活用し、国際大学でMBAを取得。 大手外資系企業、ベンチャー起業などを経て、2001年東芝iバリュー・クリエーションに入社。同年11月より現職。

 

自分が本当にやりたいことに挑戦する

 「CFO(最高財務責任者)ではなくCEO(最高経営責任者)になりたい」。金田直之氏が自分のキャリアゴールをシフトしたのは大手外資系メーカーに転職してからまもなくのことであった。

 新卒で入社した大手金属メーカーでMBAを取得後、金田氏は財務・管理会計のスペシャリストへの道を歩んでいた。「さらに、ワンランクアップしたい」という思いから転職した、その外資系メーカーでも、当初はファイナンス・ディレクターを務めていた。ただこのころから、「果たして自分が本当に目指すものはCFOなのか」と悩む機会が増えたという。

 ある日、金田氏は意を決した。上司に「マーケティングもやらせてほしい」と頼み込んだ。「やはりトップに立ちたい。No.1とNo.2の隔たりはあまりにも大きすぎる。意思決定者にならなければビジネスは面白くない。そのためには、ファイナンスだけでは不十分だ」というのが結論であった。親しくしていたヘッドハンターからは、「この選択はなかなか辛いぞ」と指摘されたものの、金田氏はその後マーケティング・ディレクターを兼務、戦略構築を手掛けた。

 2000年、金田氏はベンチャー起業という機会を迎える。中国での起業向けIRのポータルサイト事業が新会社の柱だ。金田氏は社長として迎えられ、立ち上げを取り仕切った。「自分のキャリアゴールを達成したという思いはなかったですね。資金繰りや人間関係など毎日がストレスの連続。きつかったですよ」。結局、半年ほど従事したものの、事業から手を引いた。

 「人間的にはタフになりましたが、精神的には落ち込みましたね。なんだかんだ言っても自信やプライドを失った部分がありました。正直言って、自分なら何でもできるという気概はありましたからね。やはり2、3億を自分で引っぱってくるという力がなければビジネスの立ち上げはできません。まだまだ自分には、その力がないと思い知らされました」

 そんな金田氏に再生の機会を与えてくれたのが東芝iバリュー・クリエーションであった。インキュベーション業務の担当として入社し、同社のリニューアルプロジェクトに参画することになる。ニューズウォッチとフレッシュアイのサービス統合、次世代リーダー育成を目指すビジネススクールの立ち上げ、オフィス移転など「経営そのものを再度勉強し直してみたい」という意識に駆られていた金田氏には、刺激に満ちた日々が続く。「ニューズウォッチの経営に携わってほしい」。上司から新たなミッションを託されたのは同社転職から半年後のことであった。

 ニューズウォッチは5年間で5人もの社長が交代し経営的に不安定な時期にあった。金田氏は敢えて、この企業の変革に自分の可能性を賭ける決意をした。
「ある程度の既存顧客、ソリッドな技術がある会社だなという印象はありました。いかにしてベンチャー企業並みの起動性、アグレッシブな姿勢を備えるかがカギではないかと推測していました」

 社長就任から2年が経った。この期間、金田氏はフレッシュアイの吸収合併、サイト内検索ASPサービスの立ち上げ、ベイテックシステムズの連結子会社化などを行い業績に反映させている。
 だが、金田氏はこう語る。「2年で、まだこのフェーズにいるのかと不満な部分が多いですね。顧客がWeb活用をする際にフルサポートできる会社に当面仕上げたいのです。ポートフォリオも強化しなければいけません。同時に次世代の経営者を育成し、さらに事業を増殖する『ひとりシリコンバレー』といえるような会社にしていきたい」

 「人生は1回しかありません。楽しまなくては、価値あるものにしなくては。自分が本当にやりたいことに挑戦すべきだと思います。その課程の中ではMBAは必須のものではありませんが、若いビジネスパーソンにとってはお勧めしたいですね。大きなステップへの土台になるはずです。目先だけでなく遠くを見る姿勢や視野の広さを与えてくれる場だからです」

 「MBAを取得していなかったら、今のポジションはありません。まさに人生のターニングポイントだったといえます」。金田氏はこう指摘する。

      

今回のキーワード「失敗学」

 失敗そのものに臆病になっていませんか。「失敗したらどうしよう」「周囲からの見方が変わってしまうのでは」と気にしてばかりで、せっかくのチャンスを逃していませんか。本当にやりたいことであれば仮に一度失敗したとしても、必ずそこから何か学べるものがあるはずです。最近、「失敗学のすすめ」という書籍が話題を呼びました。失敗から得たものは何かを自分なりに分析し、次にどう生かすかを考える姿勢。まだまだ日本人には苦手なようです。逆に言えば、これができる人の市場価値に注目していきたいものです。

(取材・文/袖山俊夫)      

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