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デル株式会社

人事本部 本部長

笹原 章氏(39歳)

(プロフィール)

一橋大学卒業後、自動車部品メーカーに入社。人事・労務・経営企画部門に携わったのちに、米国ハーバード大学経営大学院に自費留学しMBAを取得。経営コンサルタント、外資系オンライン証券のヴァイイスプレジデントを経て、2002年4月より現職。

 

共感、貢献することを喜びとする『企業カルチャー』に出会う素晴しさ

 「自分の価値は、自分で作るしかありません。自分は自分で育てなければ。自分の人生なのですから。そのためには、自分は何ができるのか。何が強みなのか。何が欠けているのかを見極める必要があるでしょう。ます。また、自己実現のためには、並大抵ではない苦労や努力も必要でしょう。」

 デルで人事本部本部長を務める笹原章氏は、「アクチャルなマネジメントに携わりたい」というまず、実現できる身近な目標をかなえるために米国ハーバードビジネススクールに留学した。これからの一生をどうプロフェッショナルとして過ごすべきか、さらにワンランクアップするのはどうするべきかを考えての結論。30歳というターニングポイントを控えての選択であった。

 ゼネラルマネジメントを学ぶには最適な環境と見込んだ通り、ハーバードには自分自身が主人公となって物事をドライブしていくという強い気性を持つ学生であふれていた。彼らと比較し、母国語を英語としない笹原氏にとって授業の中で自分の意思を伝えることは想像以上に困難を極めたものであったという。

 「どんなに正しいことを考えても、相手を納得させなくては意味がありません。自分だけが分かっていてもだめなのです。分かってもらうための努力をしなければ。もちろん英語力は大切でした。それに加えて、コミュニケーションの方法論、コンセプトを学びました」

 特にハーバードといえば、授業はケーススタディーが中心。限られた情報の中で意思決定し、周囲の学生をいかに納得させるかというプロセスが繰り返される。笹原氏にとってはまさに、自分自身を徹底的に鍛え直す日々が続いた。
「どのような状況下においても、結果を出すこと」。笹原氏はハーバードで、さらなる成長を確信した。

 MBAを取得後、さまざまな選択肢があったが、笹原氏は、コンサルティングファームを選ぶ。「MBAで学んだスキル、コンセプトをアクティブに再現しながら、疑似マネジメントを体験できるのでは」という狙いからだった。

 2年間、経営戦略や組織戦略のプロジェクトを中心に一通り携わったなかで、笹原氏は自分のコアスキルを「人事・組織マネジメント」として設定。コンサルタントではなく、事業会社での『アクチャル』なポジションにチャレンジする機会を伺っていた。

 折しも、米国系のオンライン証券が日本に進出し、これから本格稼働。人事部門の責任者として組織を立ち上げるというポジションに魅力を感じ転職した。だが、9.11ニューヨーク・テロの影響で日本撤退が確定。ようやく組織が立ち上がったところではあったが、事業の成果も出せずじまいに終わる。結局最後には、自分で自分に解雇を通知する役どころとなった。

 「次は、ビジネスの成長に貢献したいという非常に強い思いがありました。そのためには自分で成功するビジネスを立ち上げるか、必ず成功するチームのメンバーになること」。

 チャレンジ精神旺盛なビジネスプロフェッショナルを天は見逃さない。まもなく、笹原氏はデルに入社する。
「素晴しいメンバー、チームが揃っている会社です。日々チャレンジングな経験、責任の連続といえます。グローバルな企業ですから、それに見合った多角的な視点、実行力が求められます。しかも、スピードが速いIT業界の中でも特にスピードを重視する会社ですからね」

      

 笹原氏がデルで最も痛感したことは、『成功に向け邁進する企業カルチャー』だという。
「ドライブする力を持った人間が日々、成功を目指しています。ビジネスをさらに良くするために。ビジネスの成功をもたらすために。自分の成長を実感できる恵まれた環境といえるのではないでしょうか」

 フォーカスされた戦略、成長に対する強い意志、勝つためのビジネスモデル。デルが称する『ウイニング・カルチャー』。笹原氏は、こうした企業文化に共感し、さらに全体の成功に貢献したいという。

 「中期のキャリアビジョンでは、マネジメントというテーマの追求は変わりません。いろいろなマネジメントの形があると思いますが、しかし、最近は自分自身の成功や出世よりもビジネスを成功に導いているということが実感できることに喜びを感じてきているのです。」

 デルのカルチャー、スタイルは、カスタマー・エクスペリエンス(顧客の満足体験)を最大化させるだけでなく、その場で働くビジネスプロフェッショナルにとっても最高のエクスペリエンスを提供するようだ。そうした出合いもキャリア形成には必須といえる。

今回のキーワード「人生の成功」

 とかくキャリアアップをどう実現したら良いのかが先行しですが、その前に自分自身がどう生きていきたいのかを考えなくてはいけません。結局、キャリアは人生の一部にすぎないわけですからね。人生の成功を目指すためにキャリア戦略を立てていく。こう考えると新たな視点が見えてくるのではないでしょうか。

(取材・文/袖山俊夫)      

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