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MBA流キャリアマネジメント塾
MBAドリル
eラーニング「通勤大学MBA実践講座」

 

株式会社ニジオ

社長兼CEO

岡崎 志朗氏

(プロフィール)

 1979年慶應義塾大学工学部機械工学科卒業。81年同大学院修士課程修了後、東京ガスに入社。生産部門・R&D部門・営業部門・企画部門・新規事業開発などに従事。その間、87年ミシガン大学工学系大学院修士課程修了(社費)。94年米ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメントを修了し、MBAを取得(自費)。2002年5月より現職。

 

「No-where man」でなく、「Now-here man」のメンタリティで

 熱狂的なビートルズファンを自称する岡崎志朗氏が、毎朝聴く曲がある。ジョン・レノンが書いた名曲「No-where man」だ。曲のラスト、 "the world is at your command"(世界は君のものだ)というフレーズに心を留め、自分自身にこう問いかける。「No-where man」(居場所が無い人、迷える人)でなく、「Now-here man」(今ここにいるべき人、居なくてはならない人、代替の利かない人)のメンタリティーを持ち続けているかと。

 1992年、岡崎氏は米国のR&D投資機関(ベンチャーキャピタル)へ出向する機会を得た。

 「今しかチャンスは無い」。そう意を決した岡崎氏は、働きながら米ノースウエスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメントのエグゼクティブMBAプログラムを自費で修了。MBAを取得した。その後は営業部門・技術管理部門・本社の企画部門などに在籍。直近の3年間では連続して3つのジョイントベンチャー(エネット、イースクエア、ニジオ)の立ち上げに携わった。

 ニジオは東京ガスとロイヤル・ダッチ・シェルの合弁会社。エネルギーの自由化が進むマーケットにおいて、新規の発電事業者など超大口の顧客を対象に、天然ガスを販売している。ここで岡崎氏は、イントレプレナー(社内起業家)として代替のきかない、真の経営のプロを目指した挑戦を続ける。

 チャンスは与えられるものではない。自分で見つけ、生かしていくもの。まさに、そのチャンスの渦中に岡崎氏はいる。「真のプロ経営者に成る」。そう自分に課したミッションへの修行の機会を会社が与えてくれたことに心から感謝し、それに応えたいという。

 「自分の仕事が顧客にとって一体何の価値があるのか、ということを無頓着にやっているようなNo-where manにはなりたくないのです。本当は違うと思いながら、自らの思い入れもなくつじつま合わせの作業でむやみやたらに忙しいとこぼし、それで仕事をしてる気になっている人間にだけは」

 No-whereのNOとWの間のハイフンを右に1つずらすことで、誰もがNow-here manになれる。そうすれば「世界は君のものだ」。もちろん、そのためには自らの強い意思を持って、リスクを取り、ハイフンを右に1つずらさなくてはいけない。当然ながら結果は人任せにはできない。岡崎氏は、ジョン・レノンのメッセージをこう理解する。

 「実は、自分も数年前までは結構ハイフンは左にあった気がします。でも、これが右にずれたことですごく楽になりました。言いたいことが言える。自分の信念をもって『こうすべきだ』『こうしたい』と言うことが最も楽なことになったのです」

 Nowhereの「ハイフン」の位置が右にずれたことで、岡崎氏は「自分自身を創造する力」という自由を得たという。それは、同時に自分が好きな仕事を選択できる自由でもあったと。

 「代替の利かないプロ経営者としての現場実践と自分が体得したものを次の世代に伝える伝道師という2つのミッションを両立できたらと思っています。経営の実践の場に身を置きながら、次の世代に『気づき』と『モチベーション』、そして『感動』を呼び起こすことができる『代替の利かないオンリーワンのインストラクター』のような存在になること。それを自分の存在理由というか最終目標のゴールとして極めたい」

 もちろん、そのためにも今はニジオの経営者として「離陸直後の魔の3分間」のフライトを続けるなかで、「経営とは矛盾のコントロール」「経営とは不確実性からの価値創造の実践」に徹する覚悟だという。

 MBAを取得したからといって即、経営が実践できるわけではない。岡崎氏もこう比喩する。

 「MBAといっても経営管理に関しては『本の場所はわかる』あるいは『参考とすべき引き出しの位置は一通り分かる』といった程度にすぎません。実践の場において、自らの体験を通して転びながら学ばねば本物になれる道はないのです」

 そのプロセスにおけるいかなる経験も、キャリアゴールへ向けての無二の財産になることを岡崎氏は確信している。

 「無駄なものは1つもない」。プロの経営者としての道を極めたいとする岡崎氏には、1日が24時間では足りないという。

今回のキーワード「マインドセット」

 変革スピードはさらに高まり、競争はますます激化する。ビジネスリーダーの前途は課題が山積みだ。ストレスも想像を絶するものがあるのではないだろうか。だが、どのような状況であれ、決して自分自身を見失ってはいけない。すべては自分の成長をもたらすプロセスであり、学びの場だという前向きなマインドセットでありたい。

(取材・文/袖山俊夫)      

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