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MBA流キャリアマネジメント塾
MBAドリル
eラーニング「通勤大学MBA実践講座」

 

中外製薬株式会社

経営企画部

林 雄一氏

(プロフィール)

1991年米国ミラーズビル大学卒業。中外製薬に入社し、国際業務部門に6年在籍。社内の派遣制度を活用し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ジョン・E・アンダーソン経営大学院に留学。MBA取得以後、同社経営企画部に在籍。

 

手の届くか届かないところにゴールを設定し、新たな環境に対応できる力を身に付ける

 人事部からビジネススクール修了後の配属希望を打診され、迷わず「経営企画部」と答えた。MBAで学んだ知識やスキルを常に生かせる、やりがいと重責を兼ね備えたセクションだと判断したからだ。。激変の渦中にある製薬業界。国内外における革新的な事業展開に向け、少しでも貢献したいという思いからだった。

米国一流大学院への企業派遣、経営企画部に転属しての特命プロジェクトの担当。絵に描いたようなエリートコースを歩むが、決してエリートとしてのレールの上を歩く生き方をしてきたわけではない。高校を卒業後、1年間フリーターを経験。自動車整備の専門学校を経て、整備士として3年間勤務する。仕事は楽しかったものの、漠然とした米国への憧れが急に強まり、「今しかできないことがあるのでは」と日本を離れた。

 ペンシルバニア州でホームステイ。移民相手の語学スクールで英語を学び始めたが、「これでいいのか」という物たりなさを覚える。ホストファミリーに相談し、現地にあるミラーズビル大学へと通学。「とにかく自己資金が尽きるまでは米国を堪能したい」と思った。渡米して2年後の夏からは、就労ビザを取得し夏期休暇中にバイトをすることで学費と生活費を工面、滞在期間を1年ずつ延長した。結局、大学卒業までの5年間を米国で過ごした。

 もがき苦しんだ末に見い出したモットーが「自分が置かれた場ごとに自分の好きなことを見つけ全力投球すること。新たな環境に対応できる力は自ずと身に付く」。それが就職先でも生きた。モノ作り技術に対する高い評価、海外進出への旺盛な意欲で選んだ中外製薬では、国際業務の醍醐味を痛感。エキスパートとして成長する楽しさに浸った。

 転機は、入社6年目。部長からMBA取得を勧められた。MBAそのものに深い認識はなかったものの、「製薬企業に身を置くが、サイエンスのバックグランドがないだけに、ゼネラルマネジメントで勝負するしかない。日本では部門間ローテーションは少ないだけに経営全般の知識基盤を構築するまでには多大な時間を要してしまう」。入社時点で感じた同期との『7年の時差』も埋めたいと突き詰めた答え、それが米国UCLAへの留学であった。

 UCLAでは想像以上の苦労を体験。「米国の大学を卒業した自信もあり、正直なめていたかもしれない」。宿題の量、授業のスピードに付いていくのに必死の思いをした。特に、UCLAはチームによる課題解決のアプローチに重点を置くビジネススクールとして知られる。「さまざまなバックグラウンド、価値観を持った人間らとチームとして集まり、決められたタイムラインに沿って成果を出すことは容易ではありません。その中で自分の存在価値を認められるために高度な知識、積極的に貢献する強い意志、人間関係のスキルを磨いた」と振り返る。

 経営企画部に在籍して5年が立つ。ステークホルダーから『選ばれる企業』になるために、社員一人ひとりの知をいかに結集させるか、組織としての成果をどう創出するか、日々目論んでいる。その姿には、もはや『7年の時差』は微塵も感じられない。

 今の自分を目指して今までのプロセスがあったわけではない。3年先の自分の在り方にゴールを設定しながら、達成感を味わってきた。「メリハリのあるキャリアデザインをすることで、力も付くし、ネットワークもできる」。

 経営企画部において非常に刺激的な仕事が続くが、「できれば企業経営の根幹を成す人材育成にも携わりたい」という。次のゴールの設定は終えている。

今回のキーワード「ダイナミック」

 ダイナミックな人という印象を覚えた。人と同じ生き方に安住したくない。その都度、自分が好きなことに徹底したいという強い意志がある。自然、目に力がある。話し方にも。考え方にも。謙虚な方だが、雰囲気に現われている。『MBA友の会』(MBAホルダーを中心とするネットワーク)の代表を務めるだけあって、会った瞬間に引き込む魅力がある。プレゼンス(存在感)なのだろう。

(取材・文/袖山俊夫)

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