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≪連載・・・『定義を定義する』B≫

〜☆Vo.3 ハーバードの落ちこぼれ??☆〜

〜現場の話題、落とし穴、失敗などに注目して考えるコラム〜

これまで2回にわたり、定義の重要性、前提の重要性について考えてきましたが今回はそのまとめです。なぜトップMBAでも差がでるのか、考えて見ましょう。

『学ぶ力と設定する目標値のレベルの違い』
マイケルポーターという人の名前やファイブフォース(5つの力)、バリューチェーン(価値連鎖)ということばや概要は多くの方がご存知かと思います。MBAでも定番として扱われるので、ほとんどのMBA同窓生が有名なファイブフォース単体のフレームワークの理解や、バリューチェーンの表面的な説明はできるでしょう。

しかし、体系的な各理論の組み合わせを厳密に理解しながら、現場におけるプロセスとして落とし込んで現場で使える人がいったい、どれほどいるでしょうか?多くの人は表面的なフレームワーク単体で独立して『使っている』と言われる程度で終わっているか、もしくは『そもそもこれは理論なので、現場でなんか落としこめない(落とし込む必要がない)』といわれることでしょう。

いったいなぜでしょうか。

ここで、またまた前回に引き続き『定義』の重要性の話しです。

まずこのポーターの戦略を学ぶまたは理解をする、という『定義』が人によって随分と異なっているのですよね。つまり、その定義によって1を知って、1しか吸収できないのか、1を知って10吸収できるのか、分かれ目となります。

1しか吸収できない人は、その前提で本質的な議論をしたり討論をしようとしても、理解の程度自体が不十分で、本質的な把握ができていないため、堂々巡りで結論がでないと思うことはありませんか?定義自体が理解している人としていない人では全く異なるんですよね。

先ほどの例で考えると、たとえば『ポーターは古い』・・・などとのたまう批評家や学者もたくさんいます。しかし、直接書かれたことしか理解できない人と、それが成り立つ背景を自分で定義し、その内容から様々な場面でApplyするように示唆されたことを理解できる人が分かれるように、想像力と概念力の有無で学ぶサイクルの早さも量も180度変わってしまいますよね。(まあ、実際に書かれているものも理解できない人がいるくらいですしね・・苦笑)

定義のレベルが違うのですから、これはもうどうしようもないですよね。 

当然、完全に理解をしていない人がポーターは古いと議論しても、話している前提が違うので、議論そのものが成り立たないのです。前提を理解していない人に議論で勝てません。(『知らない』ということは恐ろしく強いことでもあります・・・)


『MBAの学習過程と効果事例』
この前提の違いは、『MBAの学習過程と効果』についても同様です。
思い出してみてください。

MBAへ留学中に、出会ったクラスメートにもいろいろな種類の人がいたと思います。MBA同窓生の中でも、当然2年間MBAコースを終了するまでに超具体的にどのようなことを吸収し、学び取りたいか、という定義(MBA留学の目的と個別目標)によってその結果は人によって大きく変わることになります。

たとえば、現在GTFが日本支部としてで運営支援をする世界の主要ビジネススクール54校のMBA同窓生コミュニティは約35万人(うち日本人同窓生は約7,500人)を超えます。この中で、例えば、ポーターの競争戦略を『本質的』に理解しているひとは恐らく半分もいないでしょう。

『おいおい、「本質的」って・・また抽象的な・・』と思われたら、さすが、するどいですね(笑)。ここにおける「本質的」の意味はこういうことです。柱の通った1つの競争戦略をポーターに沿って考えようとすると、最低限押さえておかなければならない背景や前提がいくつかあります。それらをバラバラに用いたりとか、勝手に穴あきに取捨選択して使うのではなく『体系的に』理解をして使えているかどうか、ということを指しています。

また、同窓生の中で「人によって違う」といっても、何もMBAの上位校と下位校のMBA同窓生の話しではないのです。トップMBAのクラス内でさえとてつもない大きな開きが見られるんです。米ハーバードや仏INSEADなど、MBAのトップ校であっても、クラスの上位10%と下位10%とでは、年収が1桁違うといわれています。

ここで注意したいのは、なぜ上位10%が特別に優秀なのか、ということではなく、なぜ下位10%が1桁低い市場評価を受けているかということです。

知識やスキルがあっても結果を出せない理由は様々なケースがあります。たとえば授業で一つのケーススタディをしても、そのケースから”自分”が学ぶ内容の定義づけによって、その範囲とボリュームが人によって差がでるということです。

この違いを『金持ちMBA、貧乏MBA』的な視点でミニケースを見てみましょう。テーマはケーススタディで何をどこまで学べるかについてです。

ケース事例:デルコンピュータの戦略
常勝軍団のデルコンピュータが何故成功したかをその中で推測して分析をし、あるMBA@は次のようなことを学びとったとします。
●貧乏MBA@さん『コストリーダーシップ戦略を確立できたことが成功の秘訣であろう』
つまり、『直販とBTO方式(「Built To Order:注文を受けてから製造する」を組み合わせた、「デルモデル」のコスト優位性により、小売店経由でPCを販売するベンダが1〜2カ月分の在庫を持つといわれているのと比べ平均在庫日数が4日分と大幅な短縮が可能で、この短縮による在庫削減と直販による販売コストの低下を通した利益率の高さを維持できたことが成功の秘訣である』

いかがでしょうか。非常にまともですよね。この分析自体は正しいと思われます。ただし、これって新聞の記事や雑誌の切り抜きレベルですよね。むしろ、このケースの大前提に過ぎないかもしれません。事実のまとめ(生データ)から考え、読み込んだ付加価値が無いですよね。

問題はわざわざ時間とコストをかけてこのケースを学習した結果、新聞や雑誌の切り抜き程度(GTFコメント:メディア関連の方ごめんなさい・・苦笑)になってしまっていることですよね。

当然貧乏MBA@さんの反論もあるでしょう。『実際にはクラスの中でいろいろな意見を言う人がいて、彼らと討論をすることで学んだ』と。

しかし、上記の主張を正当化するためだけに討論をしたのでは、新聞の切り抜きをもって同僚と討論するのと何ら変わりありません。ここで差がでるのは、学ぶ定義、つまり『このケースを元に学ぶ目的と内容(範囲と種類、ボリューム)』そのものが異なる場合です。

では、一方MBAAの人の視点を見てみましょう。MBAAにとっては、上記のMBA@の分析と結論は結論ではなく、デルモデルの有効性については、ケースで学ぶ前提条件の一つに過ぎません。
●金持ちMBAAさん成功した前提条件を挙げた上で、以下のように考えを広げます。
・もし同じような仕組みが同時期にできている会社があった場合は?
・模倣することが可能であれば、どのように障壁をつくるか?
・アジアの経済環境が悪化した場合の選択肢は?
・どのような大前提が変わればデルモデルの優位性が消えるか?(拡張されるか?)

この一例のように、前提となっている条件の変数を何十通りも変え、ありとあらゆるシナリオを考えながら、いかに失敗しないかのシミュレーションと、どうすればより改善できるかの展望を頭の中で体験します。

これらのシミュレーションからいえることこそが、付加価値のある分析のメッセージなんですよね。これらをファシリテーターに引き出されて考える人と、引き出されても考えられない人、そして自らケーススタディの意義を考え抜ける人と比べると、どうしてもラーニングカーブの勾配はそれぞれ変わってくるでしょう。

実際、貧乏MBA@さんのような人がたくさん増えて、その限度を超えると使い古された頭の堅いMBAイメージができあがるんですよね・・・・『MBAは使えない』etc.と。どこへいっても聞きますよね。

この貧乏MBA@さんと金持ちMBAAの差は、いったい何なんでしょうか?

よく『気付きの差』や『応用力の差』、さらには『地あたまの良さ』といった抽象的な枠組みでまとめられ、その結果、仕事ができるひと、できない人(頭を働かせられない、いわゆる”気付き”が足りない人)とグルーピングされることが多いようです。

『リサーチ現場の事例』

このような例は、身近な仕事の中でもよく見られます。たとえば、企業に勤められる多くの社員にとって、提案書のタタキ台のための調査データや、事業計画案の裏づけのための統計データーを取るために、専門の総研やリサーチ会社へカスタム調査を依頼することはできません。

一方、自分達が欲しいデータがピッタリとそのままの状態WEBや白書等で見つけることも稀でしょう。このような前提で提案書や事業計画書を作らせると、その人の地あたまのよさ(気付きの大きさ、応用力の大きさ)がわかります。例えば、携帯電話を活用したゲームの国内の市場規模が必要であったとします。

●貧乏MBA@さん『国内の該当データが無いから、台湾や韓国、米国など別な国の該当する
市場データを使おう』

また、貧乏MBA@さんは、国内のゲーム市場全体のデータや移動体通信関連事業全体など、十分にセグメント化されていない大まかなデータで代用したり、人口統計のデータで代用したりするでしょう。 

当然海外の市場動向や移動体通信全体の市場規模、そして購買力の大前提となる人口統計の流れを見ること自体は外部環境の分析として重要です。ただ、国内の携帯ゲーム市場のデータが無いからといってそれらで代用したり、勝手に∞(未知数/無限)にしたりするのは、本来

      『何のために必要なデータを探しているのか』

という定義が曖昧であったりぶれていたりするのが原因のケースが多いといえます。

雲を掴むような話で、携帯事業全体の市場規模を参照するより、業界の大手を10社ほどピックアップして、その事業者の中で携帯ゲーム事業の占める割合から、関連売上高を求め、10社合計を出した見積もりのほうが、よっぽど信頼性が高いかもしれないのです。

これらに共通するのがロジカルシンキングの中の把握レベルで、ここでのロジックツリーの横(因果関係・・・つまりロジック)と縦(MECE・・・つまりモレ、ダブリがないか)がいかに本質的かつ具体的なところまで落ちているかによって、その人の定義に対する意識レベルが変わります。


何も複雑な経営理論や経験などが必要なのではないのです。


さらにVol.1の話しに戻りますが、頭脳の役割をしている思考(ロジカルシンキング)部分がこのように不十分であると、その思考回路に基づいて活用していく戦略部分(原理原則、MBA)、戦術部分(経験、専門知識)、そしてヒューマンスキル(感情の管理)それぞれのツールの使い方も不十分であったり、論点がずれていたりしている可能性が高いのです。

つまり、思考が他のスキルの大前提になっている以上、この部分が十分に活かされないと、知識も応用できないし、例えヒューマンスキルがあっても単なる御用聞きやYESマンなど『いいひと』、『便利な人』など『ああ、ちょっとSlowな人だなあ』的な受け止められ方で終わってしまうんですよね。

つまり、結論の復習としては、常に自分や他人、そして扱うもの全ての定義に注意を払い、常に今自分達が直面している状況、問題、または話している内容の前提は
『どの範囲、どの種類で、どの程度まで含めているのか(含めるべきか)』

といった肝の部分を明確にし、妥協することなく透明性のある定義に沿った判断と行動を進めていくことが重要なんですよね。その上で知識や経験といったものは勉強やトレーニングなど、体験さえすれば吸収することはできるのですから。

是非、物事の因果関係を追及したり、内容をMECEに並べることだけで満足せず、その中身であいまいになっているブラックボックスの部分の『定義』にも目をむけ、一つずつ、かっこ悪くても仕事の中で確認しながら、業務を改善していきたいものです。

※本コラムに関するご意見はこちらまで gwp@global-taskforce.net

<3号連載特集:『定義』を斬る!おわり(次号から新連載が始まります>
☆Vo.4 『キレるマネージャ??』☆
連載“謙虚さを自問する@”


〜現場の話題、落とし穴、失敗などに注目して考えるコラム目次〜
通勤大学MBAシリーズその他の執筆を行うグローバルタスクフォースの編集部によるコラムです。体系的な知識や理論の整理を目的とするGTFの書籍群に対し、より実務的で現場よりのトピックを提供します。
※本コラムはメンバー向けのメールマガジンの中のコーナーを加筆修正したものです
Column1☆Vo.1 『ロジカルルシンキングは仕事に直結する?』☆ 
連載“定義を定義する@”≫ 
Column2☆Vo.2 『できる(はずの)ビジネスマンができない理由??』☆
連載“定義を定義するA”
Column3☆Vo.3 『ハーバードの落ちこぼれ??』☆
連載“定義を定義するB”
Column4☆Vo.4 『キレるマネージャ??』☆
連載“謙虚さを自問する@”
Column5☆Vo.5 『職務成績 or 人間関係?』??☆
連載“謙虚さを自問するA”
Column6☆Vo.6 『謙虚さVSプロフェッショナリズム』?☆
連載“謙虚さを自問するB”
Column7☆Vol.7 『実力 vs. 信頼 』?☆
連載“信頼される力とは@”
Column8☆Vol.8 『義理 vs. 論理的行動』☆
連載“信頼される力とはA”
Column9☆Vol.9 『朝令暮改 vs. 首尾一貫』?☆
連載“信頼される力とはB”
Column10☆Vol.10 『目的を考えないで突っ走ってしまいました症候群』?☆
連載“ニーズの認識とは@”
Column11☆Vol.11 『誰によって最善か』?☆
連載“ニーズを認識とはA”
Column12☆Vol.12 『お客さまは神様でない!?』?☆
連載“ニーズを認識とはB”

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